どうも、あさひです。何を隠そう僕も庭師、他人事ではありません。
昔ながらの日本庭園をもつ家も減ってきました。今の時代には合わないようで庭を潰す依頼も受けることが多いです。
車を置くスペースが欲しいから庭を潰してガレージを作ってほしいとか、バリアフリーにしてほしい、洋風にしてほしい、草とりや落ち葉の管理が大変だから、虫がイヤetc.
理由は色々ですが、やはり日本庭園は場所も取るし、実用的ではないし、手間もかかり、虫もでる。
ということで現代の人々のニーズに合っていないのだと思います。
僕としては日本庭園大好きなので伝統的な形のまま残したいのですが、時代の流れには逆らえません。
ではどうしたら日本の伝統技術、伝統文化が生き残り、次世代に伝えることができるのでしょうか。
なぜ伝統技術が衰退するのか
まずはなぜ日本の伝統技術が衰退するのか見ていきましょう。
日本の伝統技術はすばらしく世界に誇れる技術です。伝統とは「守り受け継いでいくもの」なので伝統技術自体に変化はありません。
変わっているのは僕たちの意識です。時代と共に古いものという意識が生まれ、それがやがて古臭いカッコ悪いものになっていきます。
そして環境の変化により現代の生活に合わないものになってきます。
日本刀がどんなにすばらしい技術でも本来の用途で使うわけにはいきません。
伝統技術が生き残るための3つのキーワード
生き残りのためのキーワードは
形を変える
場所を変える
人々の意識を変える
の3つです。これらは変化を起こすことです。どこを変化させるかということです。それでは1項目づつ説明していきます。
形を変える
どんなに素晴らしくてもそれを欲しいと思う人がいなければ、無くなってしまいます。
ならば人々のニーズに合わせたものを作ればよいのです。伝統技術というものが生まれたのも当時の時代のニーズがそれを必要としていたからでしょう。
伝統技術というものは作った物そのものよりもその技術が重要です。形が変わっても技術さえ受け継がれれば世代を越えてもいつか昔の形を復活させることもできます。
僕の出身地神奈川の箱根でも寄木細工という伝統技術でつくられた工芸品があります。江戸時代に生まれ初めは箱や皿などでしたが、時代と共に形を変え、現在はアクセサリーやスピーカー、プラレールなどにもなっています。
場所を変える
日本で古臭いと思われているものでも海外に行けば目新しいものとして受け入れられるかもしれません。
人は刺激を求めて新しいものを常に探しています。日本では当たり前のものでも外国人から見たら初めて見るジャパンのトラディショナルアイテムになるかもしれません。
岩手の盛岡で作られる南部鉄器がヨーロッパで人気となり今はアメリカやアジアなど世界中に南部鉄器が知られるようになりました。外国人から見ると変わったデザインで人気を呼び、お茶がおいしくなることや丈夫なこと、更には海外向けにカラフルなデザインも作っているのでカワイイなどの理由で売れています。
外国で人気になったため日本でも再認識されカラフルな南部鉄器も日本で売れるようになりました。
場所は物理的なところだけではありません。インターネットという場所に出すということもできます。Amazonや楽天、個人サイト、海外サイトなど売り場は広大です。
伝統技術とネット通販は相性がいいです。大量生産品ならどこでも手に入りますが、手作りの物は作れる数も販売場所も限られているため、欲しくても手に入れることができない人がいます。
ネットなら欲しいけどあきらめていた人も簡単に注文することができます。またネットによってそれを知る人もいるでしょう。
人々の意識を変える
最後は人々の意識を変えるということです。これはものに手を加えなくても人々に欲しいと思わせるような工夫をするということです。
曲げわっぱという物を知っているでしょうか。
これは昔から形は変わっていませんが、弁当女子の間で流行っていて、ブームが広がりつつあります。
理由はご飯がおいしくなる、見た目がかわいい、軽くて丈夫などありますが、それはもともとの曲げわっぱの持っていた機能で人気になった本当の理由はブログやインスタでかわいくておいしそうなお弁当の写真が広まったからです。
インスタ映えする写真に写っている曲げわっぱのお弁当は僕から見ても本当においしそうでオシャレです。
しかし手入れが十分でないと黒ずんだり、カビが生えることもあり、電子レンジや洗剤は使えず、お湯につけて洗うという手間がかかります。
これを逆手にとって手入れの大変なことは価値であるという付加価値をつけるのです。
曲げわっぱを持てば手間を惜しまない心の余裕を表現することができるというところに人は引かれます。人が自分を高めようとするときの一要素に持ち物によって高めるということがあります。そこに曲げわっぱはバッチリあてはまったのです。
人々の意識を変えるということは今までのイメージを壊しそれがカッコいいもの、かわいいもの、ためになるもの、などのイメージを与え、その物の機能以上の付加価値をつけることで、買う人にとって必要なものにしてしまうことです。
「うちは江戸時代から当時と全く変わらない」など変わらないことを付加価値にすることもできます。
東京のかんだやぶそば(創業明治13年)は創業当時と変わらない味を提供し続けています。また作家の池波正太郎が通ったことも人気の秘密です。
変化することは悪いことではない
伝統技術で作られるものを変化させたり、外国では正しく価値が理解されない、インスタなど今どきのはやりにのせるのは価値が下がる。
こう考える人もいると思いますが、物の価値を決めるのはそれを買う人です。
僕も職人なので気持ちは分かりますが、職人には頭の固い人が多いです。自分の技術はすばらしいから人々がこのすばらしさを理解すべきだと考え、人々が求めていないところにこだわることがあります。
そんなプライドを持ち続ければ滅びるのは目に見えています。伝統技術を持つ職人として譲れないプライドと捨て去るプライドを選択しなくてはいけません。
まとめ
ここまで読んだら伝統技術が生き残る道はたくさん残されているように感じてきませんか。
実は伝統技術とはいっても大企業もベンチャー企業もやることはそんなに変わりはありません。
伝統技術がこのような新しいことに挑戦できないのは高齢化が進んで若手がいないということもあります。高齢でも新しいことには挑戦できるはずなのですが、やはり若手の方が柔軟で新しい発想には対応しやすいです。
伝統技術を守り受け継いでいくためには現代の人々のニーズに合わせて変化していく必要があります。